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特撮復興二次:とある夫婦の馴れ初め

2020/10/07 01:47:19 | 一般人夫婦ネタ | コメント:0件

3881 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:20:50 ID:4XFLG/Bo0 [16/19]
●とある夫婦の馴れ初め


「ねぇ、私と結婚してよ」
「は?」

 それは唐突な、よくある共学女子からのプロポーズだった。
 ただ一つ違っていたのは、寝ていた男が自分で起きるまで少女がずっと待っていた、といったところだろうか。教室から誰もいなくなる、日が落ちる直前まで。

「……ハッ、どうして俺が」
「あのね、結婚してるとお得なのよ。男子割とか男子優先予約とか知ってる?」
「……」
「結婚してるとそれで色々お得に買い物できちゃうわけ! 入手困難なレアグッズも買えちゃうわ! すごくない? 使わないのはもったいないわよね!」

 そう言って勝手に言葉を続ける少女に、男は首をかしげる。

「俺に得が無いんだが」
「え、そう? うーん……じゃあ私が養ってあげるからってのはどう?」
「……お前んち、金持ちなの?」
「いや、フツーの家よ? 謙遜じゃなくて」

 フッ、と鼻で笑う男。

「それでどうやって俺を養うってんだよ」
「んー、普通に働いて?」
「普通に?」
「結婚してるとお給料も良くなるらしいわよ。だからいけるとおもうの。割引や特典もあるし、あなたを養っても元は取れるわ。あ、他の奥さんに頼るのもアリね!」
「ふぅん」

 それは、男にとってはどうでもいい事だった。どうせ男は家で寝てるくらいしかできないのだから、一定の生活ができるのであれば何も変わりはない。

「あ、こういうのもあるわよ。好きでしょ、こういうの」
「好きでしょ、って。……女は人の好みを勝手に決めつけ――んん?」

 と、少女が手に持ったカタログを見せてくる。それは――


 ――1人用ハンモック……?


「……なんで?」
「え、だって自己紹介で『寝るのを邪魔するな』って言ってたでしょ。なら寝るのが好きなんじゃないの? 違った?」
「ふむ」

 確かに寝るのは好きだ。生きがいというか、寝るために生きているような男。
 しかし聞いているのはそこじゃない。

「もう一度聞く。なんで、『1人用』なんだ?」
「え、なんでって、あなたが使うだけなら1人用で十分だと思うんだけど。あ、もっと大きいのを独り占めして寝たいならそっちにしてもいいわよ。要望があるなら言ってね、他人の考えてることなんて、言われないとわかんないんだから」
「……なるほど?」

 男は、「一緒に寝ようという誘いをしなくていいのか」と聞いたにもかかわらず。
 少女は「大きさに不満があるのかな」と判断した。

 そこには、『男性を利用しよう』という意識が無かった。
 ……男割とか、男子優先を使おうと言っているのにだ。不思議な食い違い。
 男は、そこが気になった。

「なぁ。例えば俺が『働いて、金儲けがしたい』って言ったらどうする?」
「ん? 好きにすればいいじゃないの」
「できねぇだろ、男は。働くなんて」
「政治家とか俳優とかあるじゃない」
「見世物になる気はない」
「ふぅん。わがままねぇ」

 男は落胆する。『わがまま』か、やっぱり、こいつも『女』か、と。
 だが。

「でもそんなわがままを叶えるのも良い女ってやつよ!」
「は?」
「男じゃだめなら、女になればいいじゃない」
「女に、て、……は?」

 手術でもして、性転換をしろとでもいうのだろうか。
 と思ったが、事はもっと簡単で単純だった。

「姉の知り合いでバイト探してるトコあるんだけど、女装して一緒に行かない?」
「じょ……女装?」
「バレなきゃ大丈夫よ! バレたら――ま、その時は私が怒られるかしら?」

 怒られる、で済む問題じゃない。発覚すれば間違いなく退学だろう、少女だけ。
 男は……今以上に窮屈な監視がつくかもしれない。

「男って華奢だし、肌も白いし、女装すれば女の子より女の子らしくなるわよ」
「ハハッ。ちなみにどんなバイトなんだ?」
「んーと、バーのお手伝いよ」
「未成年で酒場の手伝いとかますますヤバいな。ハハッ、面白いな」
「失礼ね。ちゃんと合法な、未成年でもできるお手伝いよ!」
「女なら、だけどな」

 くっく、と、こらえ切れずに笑いを盛らす男。
 ……はて、『思わず』笑ったのなんて何年ぶりだろうか?
 ああ、こいつとなら結婚しても良いかもしれない、養ってくれるらしいし。
 男はそう思った。

「分かった。お前の条件を飲もう」
「やった! じゃあ明日かつらとメイク道具持ってくるからよろしくね!」
「ん?」

 それだけ言って、少女は帰って行った。

 男は「気に入ったから結婚してやろう」と思って言ったのだが。
 少女は「バイトをやる」と解釈したらしい。まさか本当にバイトをさせる気か?

「……まぁ、男子と結婚すれば、退学はないだろ……」

 男は日の暮れた教室で、ぽつりと呟いた。



3882 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:21:03 ID:4XFLG/Bo0 [17/19]

 翌日の放課後、少女は約束通りカツラとメイク道具を持ってきた。
 早速、二人きりになれる場所――男子に用意された休憩室――でメイクを施してもらう男。

「……まさか本気だとは」
「ふふん、私は約束を守る女よ!」

 そうして女装を施されていく。とはいえ、学生らしく、ナチュラルメイク。
 元々、外出をしない男子は肌も白く、顔色の悪さ自体も女装には関係ない。
 用意された制服は少女の予備のものだそうで、そのまま着ると胸が余る。

「……やっぱり大きかったかしら」
「頭と胸がめっちゃ重い。もっと短く小さくできないのか?」
「華奢ねぇ。あー、ごめん、借り物だからカツラは無理ね。胸の方は詰め物を丸めたタオルにすればいけると思うわ」

 ぺたぺたと遠慮なく触ってくる少女。
 セクハラであると訴えれば勝てる事案だったが、男も悪い気はしなかった。
 それよりも、鏡に映る自分の姿に驚愕を覚えることになる。

「……うわ、すげぇ。これ本当に俺か?」

 そこに映っていたのは、根暗そうだが、立派に『女性らしい女』であった。
 ちなみに、男の眼付きの悪さはそのままなのである。

「……なぁ、メイクで目つきってどうにかならんかったの?」
「そこがいいんじゃないの! それを直すなんてとんでもないわ!」
「……さいで」

 どうも少女のお気に入りポイントらしい。まあいいか、と男は頭を切り替える。

「声もうちょっと高くできない?」
「ん、んん……コレ、ホントウニ、オレカ?」
「あー、あー、無理しなくていいわ。ハスキーボイスってことでなんとか誤魔化す」
「なるべく高めの声を意識しよう」
「あと、あんまり喋らないほうが良さそうね」

 それが一番だろう、と男も頷いて返した。


「あ、そうだ。この書類サインしておいてくれる? 1枚だけでいいわ」

 と、そこに『女子と男子の交流のための申請書』という書類を差し出された。

「ん? なんだこれ……交流? 天体観測? なんだこれ、バイトじゃなかったのか?」
「建前よ、建前。ほら、バイト先が酒場だから、バイト終わるの夜中よ?」
「……つまり?」
「交流ってことにすると『女子の校舎への時間外出入り』と『男子寮門限』を突破できるのよ。あとはあなたが『女』になれば全く問題なくなるわ。てか、こうしとかなきゃお家に帰れないわよ」
「あぁー、なるほど。『男』の俺は学校でお前と交流してることにするわけだ。バイトが終わったら学校に戻って、『男』の俺も寮へ帰る、と」

 納得し、男は書類にサインを入れた。

「そーゆーこと。男子との交流って、参加した『女』が『一旦席を外す』のは自由なのよねー、男の許可があればその女の『友達』も同席・退席できるしー。……ね、『お友達』でしょ私達。一緒に男子と交流しましょー? なんちゃって。普通は誘われる側のセリフだけど」
「……お前頭いいな?」

 男のサインひとつで、そんな形式の交流が名目上で成り立つらしい。しかも教員への提出も、今から職員室に持って行って「男子が折角許可してくれたんです! 今日しかないんです! お願いします!」とかいえばOKだとか。

 ある意味男子が優遇されている、と言えなくもない。さすがに次回は前日には「前回と同様ので」という感じで提出するらしいが……いや次回もあるのかよ。男は呆れた。


「……お前、本当に頭いいな」

 まぁ頭が悪かったら競争率の高い共学には入学できないのだが。女子は。

「手元にあるものを組み合わせただけよ? 意外となんとかなるものよねー」
「……そっか。そういうもんか。ていうか、夜中に男を出歩かせるとか正気か?」
「鏡見て言いなさいよ。今は『女』、つまり何の問題も無いわ」

 少女の得意げな笑みにつられ、鏡の中の『女』も不器用に笑っていた。

  * * *

 部屋から出て、バイト先へ向かう。
 途中、他の女生徒とすれ違うが、女装した男は全く見向きもされなかった。
 そして、それは守衛もだった。少女が軽く頭を下げて挨拶するのを真似てぺこりと頭を下げた、それだけで、学校という檻から男は抜け出すことができたのだ。

「すげぇな」
「ん? なにが?」
「いや、こんな簡単に外に出れると思わなかったからさ」

 なにせ男はたった1枚の書類にサインしただけなのだ。
 通常であれば、数千文字の資料を纏め、計画を立て、その上で申請し、そして数日待って――それでも許可が下りるか分からないというのに。

「あー、男子は手続きが面倒なんだっけ。ま、バイトの度にそんな手続きしてられないでしょ? ほら行くわよ」

 しかもこれからも、男が『バイト』に行くたびにこの手段を使うらしい。……もちろんバレたら大変なことになるし、二度とこの手口も使えなくなるだろう。

「まさか、本当にバイトにいくのか俺は」
「何言ってるのよ、働いてお金稼ぎたいって言ったのはあなたでしょ?」

 とてもすごい事だ、と男は思う。
 なにをこんな事で、と少女は思う。

 これが、男女の差なのだろうか。

「な、なぁ、あれはなんだ?」
「ちょっと。口調が可愛くないわ、『あれはなぁに』って言いなさい」
「あれはなぁに?」
「ふふん、あれはね――」

 男は、初めて世界を見る心地で町を歩く。実際、男として歩く町とは全く違う世界だった。



3883 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:21:19 ID:4XFLG/Bo0 [18/19]

「きゃー! ありがとう、助かるわー!」

 そしてバイト先。ろくな面接をすることなく、男は働くことが決まった。
 もちろん、男だとバレたわけではなく。

「あー、でもこの子バイトとか初めての箱入り娘なんで、足を引っ張っちゃうかも?」
「大丈夫、共学の子なら簡単に覚えられる簡単なお仕事!」
「お、オテヤワラカニ……」

 そう、共学には基本的に優秀な学力がなければ入れない。女子の場合は。
 男子は無条件で、書類に名前を書くだけで――最悪、書けなくても――入学できる。

 幸いなことに任された仕事はレジ打ち。バイト初日にいきなり金を任されることになりこの店大丈夫かとも驚いたが、そこは機械化が進んでおり、店員が現物のお金に触れることなく進行されるようになっていた。

 あまりに簡単な仕事に、これは『女装した男子がレジ打ちをしています』という見世物のバイトなのでは? と勘違いしそうになる程だったが、それは客の態度から否定することができた。まるで興味のない置物のような扱いで、男にはやはり新鮮だった。


「助かったわ、この時間ってスキマになってて人手が足りなくて。いつもレジ要員いなかったの」
「いっそ完全機械化して全自動レジにすればいいんじゃないですか?」
「……酒場ってね、『人間味が感じられないから嫌』って完全自動レジ否定派のお客さんが多いのよ。面倒くさいわよね……」

 バイト先の先輩はそう言ってため息を吐いた。よく分からないが、そういうことらしい。

「あ、私達ちょっとすぐ買いたいものあるんで現金でバイト代貰えますか?」
「ん? いいわよー」

 少女の一言で、ちょいちょいとレジを操作する先輩。その後、男の手には今日のバイト代がしっかりと置かれることになった。時給千円で2時間働き2千円。初めての、自分で稼いだお金。


「また頼むわね! お願いね! 定期的にシフトいれてくれたらお姉さん嬉しい! あ、次は厨房スタッフなんてのもどうかな! 歓迎するわよ!」

 隠れた打算が一切無い笑顔でそう見送られ、男と少女は帰路につく。

「ははっ、厨房スタッフだって。包丁持たせてもらえんの?」
「案外自動化されてて楽なもんだったわよ、私そっち手伝ってきたの、基本は盛り付け」
「へー。でも、まさか男を厨房に誘ったなんて知ったら……先輩どんな顔するかな?」
「一応、私の姉様の友達なのよ。いじめないであげて?」

 さして星が出ているわけでもない夜中だったが、道はとても明るく感じた。


 * * *

 それで、特にバレることもなく何日かバイトをしたり、稼いだお金を使いにデートしたり、建前であった天体観測の交流会(暗くて女子達の目線があまり気にならず良かった)を開いてみたりした数日後のある日。

 男は「金稼ぎはしたかったけど、労働したいわけでもなかったからもうバイトはいいや、ありがとな」と少女に礼を告げた。

 すると。

「あ、うん。あー……ねー、その。私、これからもあなたと一緒に居たいんだけど。養うから結婚しない?」

 少女が恐る恐る、プロポーズしてきた。いつもの元気や自信はどこへ行ったのか、なんとも自信なさげに。

「その、たまに会ってくれればいいから……書類婚だけでも、なんて、ダメかな?……うぅぅ、す、好きなの。好きなのよぅ、どんな形でもいいから結婚して欲しいの……」
「いいぞ?」
「あはは、こんなのだめよねやっぱ……ほんとは、一目会った時からその死んだ魚みたいな腐った目つきが頭から離れなくって、その、私、迷惑だったよね。ごめんね」
「いや、いいってば。養ってくれるんだろ」

 男は、そういやまだ結婚してなかったな、と少女からのプロポーズを了承した。
 ……バイトするにあたって既に書類上くらいは結婚している気になっていたのである。

「とりあえず同居婚でいいか? 問題あるなら別居婚でもいいけど……」
「……え、いいの?……しかも同居婚!? え!?」
「その方が、男子割とかが好きに使えてお得なんだろ?」
「あ、うん。確かにそうだけど……え、いいの?」
「嫌か?」
「嫌じゃない! わ、私でいいの?」
「お前がいいんだ。……いや、死んだ魚みたいな目が好きってのはどうかと思うけど」
「そ、それはきっかけであって絶対条件ってわけじゃないんだからねっ!?」

 ちなみに男が同居婚にしたのは「また女装して出かける時に便利だろ」と思ってのことであるが、男にも、一緒に居たいという他意がもちろんあった。

 その後、何の後ろ盾もない少女が同居婚をすることになったことでちょっと――かなり?――大変なことになるのだが、それはまた別の話。



3884 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:22:01 ID:4XFLG/Bo0 [19/19]
と、以上です。(ぺたぺた)

3885 名前:デスマスク☆作詞マン[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:25:21 ID:MDstWvuC0 [7/7]
乙でした。

3886 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:29:25 ID:aoR0Ahwc0 [3/4]
乙でした
運命の相手見つけた夫婦、いい……

3887 名前:名無しの読者さん[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:29:31 ID:h5Bt+N7f0
乙です。
変わり者同士のボーイミーツガールいいですねぇ

3889 名前:トーリ@全裸[sage] 投稿日:2020/10/06(火) 22:33:01 ID:ICOpMGUl0 [29/29]
お疲れ様でした。
これは出会うべくして出合った二人としか。
これもまたひとつの比翼連理。
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